ときおり、ひょっこり、顔を出す

音楽•競馬•日本酒好きアラフォー男。日々思いつくまま、勝手気ままな頻度で更新しています。読んで「くだらない」「ほっとした」と思ってくれたら幸いです。

スプリングハズカム

4/13土

妻に陣痛がきたという。

予定日は3日前。その前にも陣痛らしきものがあったが、病院に行くもまだだ、と二度帰宅したことがあった。

車で病院に向かう。

23時に入院が決まった。

個室が空いており、希望だった立ち会いが叶った。

 

4/14日

妻に痛みが来ると、肩と肋骨のあたりに手を当て、呼吸しやすいよう、微かに広げたり狭めたりする。

モニターをつけて、陣痛感覚を見るが、なかなか間隔は狭まらない。

1時間ごとに助産師さんが見にくる。

妻がしゃべれることから、まだ本陣痛ではないらしい。とはいえ、妻は痛いようだ。

少しは楽になればと、身体に触れる。

診察では、子宮口は開いていて、柔らかくもなってきているとのこと。とはいえ、進みはゆっくりで、朝を過ぎると夜勤明けのように疲れてしまった。

側のソファーで横になりながら、妻に必要な時に呼んでもらうようにした。

妻も眠れておらず、疲れている。

 

陣痛を促すため、個室内を歩いたり、スクワットをするように言われたりしたが、あまり陽の入らない個室をぐるぐる歩き続けることを思うと、妻には申し訳ないが気が滅入ってしまったため、ソファーで少し休ませてもらった。

 

お昼が過ぎてから。

妻はシャワーに入ったり、足湯に入ったりして、身体をあたためる。

アクティブチェアーという、木馬のような揺れる椅子にまたがり、自然に陣痛を促す。

 

ゆっくり、子どもは降りてくる準備をしているようだが、眠れていない妻の疲れと、自分の疲れから、明日に仕切り直しましょう、ということで、19時頃、私は一回帰宅することになった。

 

交代勤務で変わる助産師さんは一人一人キャラが濃い。言うこともちょっと違う。

我々夫婦も、長時間いるため、なかなか進まないお産に困惑した。でも、寄り添ってくれていたことはよくわかった。

「赤ちゃんはお母さんのお腹の居心地がいいのかもしれませんね」

最終的に、降りてくるタイミングを決めるのは赤ちゃんなんだな。

帰宅して、身体を休めるため、シャワーを浴びて、何かを食べて、布団に入って泥のように眠った。

 

4/15月

一先ず、身体は休まった気がする。

朝、再び病院へ。

妻は夜間も陣痛が続き、眠れなかったようだ。とはいえ、まだしゃべれている。主治医が来て、一旦しっかりした痛みをつけていきましょう、ということで陣痛促進剤を使うことになった。

 

点滴を落としたら、すぐに来る、というものではないらしい。初めはゆっくり落とし、点滴が100ml超えたところで、少しずつ痛みがついてくるのではないか、ということ。点滴も時間がかかるので、その間、また歩いたりスクワットしたりするよう言われる。宇多田ヒカルや藤井風をかけて、妻と一緒に歩く。

 

そうこうしているとあっという間に昼過ぎだ。時々、助産師さんが来て、点滴のスピードを上げていく。

100mlやっと超えたあと、助産師さんが妻の腕の腫れに気づく。点滴漏れだ。

反対の手で、またゆっくりの最初のスピードで点滴を始めるという。ルートを取り直す。妻は大丈夫なのだろうか。頑張っているのに、こんなことがあるのか。

 

私も妻の腕に気にかけるようにした。点滴のスピードを上げにくるタイミングで、腫れていないか注視した。すると、何回目かのタイミングで、また腕が腫れ出した。助産師に伝えると、再び点滴は中止。

 

この時、夕方に差し掛かる時だった。その時、妻の疲れから、促進剤もまた明日に仕切り直そうか、と医師から言われる。

妻も私も思わず、「えー!」と言った。

そんなことあるか、って私は思った。

 

ひとまず、診察でお産が進んでいるか、子宮口の開き具合を確認して決めましょう、とのことだった。

 

ゆっくりではあるが、着実に進んでいる。

頑張ってみますか、と医師の言葉。

 

もう一回、点滴ルートを取り直す。もう絶対漏れないで、と心から祈った。時間が経過しても、もう漏れることはなかった。

 

この時から、妻は色々な姿勢を取ることを勧められた。うつ伏せのような姿勢になったり、座位を取ったり、横向きになったり。

助産師さんが母乳マッサージをする。これもお産を促すらしい。

 

夜に差し掛かってきたころ、妻の声の出し方や陣痛の強度が変わってきた。身体をさすったり、一緒に呼吸をしたり。痛みで呼吸を忘れちゃうから、言ってほしい、と。

 

個室には、今まで無かった器具が用意され始めた。取り上げの準備をしてくれているようだ。

でも、いつ本当に産まれるのだろうか。

 

促進剤が始まってからは、常時モニターが付いていたが、これだけはずっと言われていた。「赤ちゃんは元気ですね」。お腹の子は逞しい。

 

子宮口が全開になるまで、いきみ方に種類があることを知った。四つ這いでいる妻の腰をさすりながら、テニスボールをお尻のあたりに当てたりした。

 

夜勤の医師が来て、今日は妻の疲れから厳しいかもしれない、とまた言われる。診察して進み具合を見ましょう、と。

何回目だろう。妻はこの時、どんな想いだったのだろう。

病院は交代勤務だから、いくら引き継ぎがあるとはいえ、交代のタイミングは、また初めまして、だ。同じ医師で、同じ助産師さんだったら、と思う事もあった。そんな事言ったら、働く人は身体がいくつあっても足りないですよね。自分勝手ですみません。

 

「あ、思ったより進んでるね。よし、もう少し頑張りましょうね」

 

 

妻は声を上げて、お産を進めている。

私はただただ手を握って、呼吸のリズムを模倣して、側にいる。

助産師さんに四つ這いになっている妻の腰を触ってみて、と言われる。

赤ちゃんが産道を通って降りているのがわかりますよ、と。

初めは全くわからなかったが、一瞬、もこっと手のひらに盛り上がる感触があった。 

 

 

ここまで来るのが、本当に長かったね。

子宮口が全開になった。やがて、破水した。

 

仰向けの体制になっていきむ妻。

助産師さんから、ここからは声を出すと力が逃げるので、大きく息を吸って、いきむタイミングで、声を止める、目をつむると顔に力が入ってしまうので、目を開ける、と指導が入る。

最後まで叫び続ける訳ではないことを、立ち会うことで初めて知った。

気休めかもしれないが、いきむタイミングに合わせて、私も必死に妻の顔を見ながら手を握って、目を開いた。

 

4/16火

0時2分。3634g、50cm。

元気な女の子が、生まれた。

入院してから、49時間。

頑張った妻を見て、足元からおっきな赤ちゃんが取り上げられたのを見て、涙が出た。

 

「こんなに大きかったら、それは時間かかるよねー」

文字面はきついけど、医師の言葉は愛情に満ちていた。

 

本当に妻は頑張った。

 

情けないことに、私は血が得意ではない。

立ち会って、貧血でも起こして、倒れて、頭打って、迷惑かけたら悪いからヘルメット被ろうか、なんて冗談言ったこともあった。

 

しかし、心から立ち会って良かったと今では思う。

こんなに感動的な瞬間があるんだな、と。

 

赤ちゃん、元気に泣いてくれた。

妻の処置がされている間に、子どもはその後助産師さんに身体をきれいにしてもらっていた。

 

出産後の妻の顔はすっかりお母さんのようだった。

妊娠中にテレビで出産立ち会いの番組を見たら、「なんか面白いこと言って!」と奥様に言われる夫がいて、あー私もそんなことがあるのかしら、と思っていたけど、一度もイライラをぶつけてくることなんてなかった。

 

しばらくしてから、分娩ベッドで、3人の写真を撮ってもらった。

妻は疲れながらも安らかで、私は笑顔で、子どもは小さくて。それはそれは、とてもいい写真だった。

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4/29月

 

昨日、里帰り中の妻の実家に泊まって、娘のオムツ替えたり、ミルク作ったりあげたり、ゲップを出したり、哺乳瓶を消毒したり、

 

沐浴を教えてもらったり、お世話の仕方を学んできた。

 

そして、これからまた向かう。

 

LINEのビデオ通話で見る娘もいいが、リアルは別物だ。

5/3からの3人暮らしに向けて、バタバタと毎日は過ぎていく。

 

あなたは私のところに来て、腕に抱かれました。手はとても小さくも、もうしっかり、手でした。あなたの目はこれから、何を見るのかね。

 

これからが大変なのはわかっているよ。

でもね、昨日。3人で布団並べて、寝ている時。

これが幸せか!とハッとしたよ。

今だけは糠喜びします。

 

これから、どうぞよろしくね。